ボードゲーム「Rosenkönig(ローゼンケーニッヒ)」

ボードゲームに関する評価のポリシーについてはこちらを参照のこと。

基本情報

  • Rosenkönig(ローゼンケーニッヒ)
  • Dirk Henn
  • 2人
  • 30分
  • 1999年
  • 言語依存なし

ゲームの概要

子供がまだ小さかったりすると、空き時間にさくっとできる2人用ゲームの需要が高い。また、子供がそれなりの年齢であったとしても、比較的単純なメカニクスが多い2人用ゲームは子供もプレイできてより重宝する。そういった観点からおれが猛烈に推したい2人用ゲームはJaipurと今回紹介する Rosenkönig(ローゼンケーニッヒ)である。

ボード全景

見よ、このシャレオツなボードを。

英仏百年戦争の後に起きた、イギリス国内でのヨーク家とランカスター家の争いであるばら戦争を題材にした、陣取りゲームだ。プレイヤーはお互いに王冠コマを移動させるための移動カード(パワーカードと言う)をそれぞれ5枚持ち、場に公開しておく。またこの山札とは別に、勝負の流れを変える力を持つ騎士カードを4枚持つ。
手番では「パワーカードを使う」「山札からパワーカードを1枚引いて公開する」のいずれかを行う。両方できない場合はパスとなる。基本的にパスは手番が全く無駄になるので、できればパスせざるを得ない状況になるのは避けるべきだ。逆に、相手がパスせざるを得ない状況に追い込むのは良い戦術と言える。

「パワーカードを使う」場合は、オープンになっている自分のパワーカードを1枚選び、カードに示される方向(8方向)と移動力の分だけ、ボード上の王冠コマを移動させて、そのマスに自分の勢力コマを置く。騎士カードを使わない場合は、移動先に別のコマ(敵味方を問わない)があるとそこへは移動できない。また、ボード外に飛び出すような移動もできない。なお、移動する向きは、カードの王冠の向きとボードの王冠の向きが一致した方向となる。

パワーカードの使用

パワーカードを使って王冠を移動させ…

パワーカードの使用

移動先に自分のコマを置く。ちなみにコマは白と赤で裏表になっている。

「山札からパワーカードを1枚引いて公開する」場合は、山札から1枚パワーカードをめくって自分の前に置く。パワーカードは自動的に補充されないので、手番を消費して補充する必要があるのだ。パワーカードを使い切って補充をしている間に、相手にどんどん動かれて戦局が大きく変わっていた、ということはよくある。
また、今あるパワーカードではどこにも移動できない場合は、基本的にこの行動を選択するわけだが、すでにカードが5枚オープンになっていると、このアクションをすることはできない。

勝利点の計算は最終的にボードに置いたコマによる。勝利点は、縦横に隣接している自分のコマを1グループとし、各グループのコマ数を2乗した積算となる。例えば下図のように9コマ、5コマ、3コマ、1コマ、1コマという5つのグループがあったら、9×9+5×5+3×3+1×1+1×1=117点(白側)である。ゆえに、できるだけ大きなグループを作るようにコマを置いていくことが必要だ。

勝利点の計算例

縦横につながったコマを1グループとして数える(みづらいが、赤枠で囲まれた部分)。

できるだけ大きなコマのグループを作るうえで欠かせないルールが騎士カード。王冠コマを移動させるときは、移動先にコマがないことが条件だったが、騎士カードを一緒に使用すれば、移動先に相手のコマがいる場合に、そのコマを自分のコマにすることができるのだ。これにより、分断されていたグループ同士をくっつけて大きなグループにすることができる。また、そのコマが相手のグループの結節点だったりすれば、大ダメージだ。こうした場合、ルールによれば「稲妻十字空烈刃(サンダークロススプリットアタック)!」「ふふ、波紋入りのバラの刺は痛かろう」と言いながらコマをひっくり返すことになっている(やられた方は「いい気になるなよ!KUAA!」と言ってあげよう)。

白のアタックチャンス

アタックチャーンス!

白のアタックチャンス

このパワーカードと騎士カードを使えば…

白のアタックチャンス

赤を分断し白が見事につながった。パリ挑戦権獲得!

なお騎士カードは使い切りなので、各プレイヤーは4回までしか実行できないことに注意。

すべてのコマを置ききるか(マスの面積よりもコマ数は少ない)双方がパワーカード5枚を持っている状態でどこにも移動することができなくなった時点でゲーム終了となる。

ゲームに対する評価

ローゼンケーニッヒが素晴らしいのは、ルールの簡便さもさることながら、移動カードによって選択肢を絞り、思考の負荷を低減している点と、適度な運要素によって実力差があってもそれなりにいい勝負になる点だ。
ローゼンケーニッヒは陣取りだ。その意味で本質的には囲碁と変わらない。しかし、囲碁は19路盤という広大なフィールドで、しかもほとんどどこにでも石を置けるために選択肢が膨大である。自分がどう石を打ち、相手がどう打ってくるか、それなりに経験を積まなければ先がまったく見えない。一方でローゼンケーニッヒは、自分と相手がとれる行動の選択肢が見えている。自分がこの移動カードを出したら、相手はあの移動カードを出すとグループがつながってしまう…というような見通しが、初めてのプレイでも可能なのだ。これはゲームに対する敷居を劇的に下げる効果がある。
また、初心者にとってありがたいのは、移動カードのめくりという適度な運要素があるということ。初心者であってもゲームには勝ちたいものだ。かといって運要素100パーセントでは勝利をつかむために費やした努力が無用となり面白くない。その絶妙なバランスをこのゲームは実現していると思う。もちろん、双方の移動カードをカウンティングすれば、運要素は大きく減らすことができるが、そこまでして勝ちたいのであれば、もっと別のゲームをすればよい。実力差があまりにもあるのであれば、騎士カードを減らす、最初からコマを置かせるなど、ハンデもつけやすい。

このゲームには欠点らしい欠点はない。一つだけ言いがかりに近いマイナスポイントを挙げるのであれば、シンプルすぎるがゆえに、飽きてしまう可能性があることくらいだ。まあそれはどんなゲームにも言えること。コンポーネントもすべて木製のコマであり、ボードのビジュアルもシンプルかつエレガント。所持しない理由はないだろう。

boardgamegeekのページはこちら。余談だが、もともとこのゲーム、「Texas」という名前で1992年に発表されている。薔薇の代わりに牧場と農場の面積を競うものであったようだ。実に地味。ボードゲームはテーマ設定も重要であることを痛感させられる。

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