ボードゲームの雑感「お勧めボードゲーム○○選記事へのヴァイオレンスな6つの主張」

お勧めアイテム○○選と題するwebの記事はボードゲームだけに限らず数多く見られるが、「絶対盛り上がるパーティーゲーム○○選」だとか「初心者にオススメするボードゲーム○○選」といった、実際にプレイしてもいない流行りに乗っかっただけのweb記事をいかにおれが嫌っているかを語る記事です。

1.ライターのエアプレイ疑惑

まずなんでこうした○○選系の記事が嫌いなのかというと、そのほとんどが「どっかに書いてあった内容」を寄せ集めたものであり、実際にプレイしてもいない人間が書いた感しかない薄っぺらい内容が腹立たしいからだ。実際に面白いゲームが紹介されていたとしても、実際にプレイし、本当に面白いと感じたことを書いていないから、面白さが伝わるわけがない。行間を読むには経験が浅い初心者は「それほんとに面白いのかね?」といらぬ懸念を植え付けかねない。

2.ライターの質

最近流行しているから、なんかそれっぽい記事を切り貼りするだけで閲覧数が稼げるんじゃね?と思っている程度のライターが書いているので、限られた紙面で面白いことを語れるだけの技量がゼロである。文章やスピーチは、短くまとめるほうが圧倒的に難しい。アメリカ大統領のウィルソンは演説の準備について訊かれたときに、「10分のスピーチであれば準備に2週間はかかる。30分の演説であれば1週間、いくらでも喋ってよいのであれば今すぐにでも」と答えたという*1

簡潔にまとめるだけの確かな文章力がないのであれば、一本一本のレビューを書き、その上でまとめた記事からリンクを貼ればよいのだが、実際にプレイしているわけではないのでそれができないし、そこまでの誠意はないのであろう。この羽賀研二どもめ。

そういえば竜雷太って今何してんだろう。

3.情報のバランス

ポジティブな情報しか載っていないということもこうした記事の特徴だ。超名作と言われるゲームであっても合わない人がいるのだから、ネガティブな要素が一切ないゲームは存在しない。本当に読み手のことを考えているならば、正しい判断材料を載せるべきだろう。よって、こうした記事の大半は提灯記事であることが推測される。

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これは提灯…ではなくて凶悪カードとして名高い「Balance(天秤)」
(画像はMtG日本公式サイトより引用:https://mtg-jp.com/

4.コミュニケーション系ゲームの扱い

初心者向けのボードゲームのまとめ記事によくある傾向として、必ずコミュニケーション系のゲームが含まれることも、判を捺したように共通している。コミュニケーション系ゲームの隆盛を方向づけたDixitや、創作系のBarbarossa、Telestrationsのようなゲームが挙げられているならまだわかるが、合コンのノリを一般化したようなはぁっていうゲームや一発ネタとしてしか使えないソクラテスラが挙がっている時点で、本気で初心者をボードゲームの世界に誘おうという気がないことがわかる。この記事にも書いたが、ボードゲームは「頭を使うこと」が楽しさの重要な要素であって、ワイワイすることの楽しさはボードゲームの根本的な楽しさとは異なる。単純なパーティーゲームよりも考えどころのある軽量級や、中量級のゲームに最初に触れるほうがボードゲームにはまる傾向が強いことをライターは知らないのだろう。それに、コミュニケーション系のゲームは人を選ぶという基本的な事実に無頓着であることもライターの想像力の欠如を示すものであって、人にモノを勧める人間として信用ならない。

5.タイトルのエクスクラメーション

○○選の記事のタイトルには「!」がついていることも多い。タイトルでフンムーと鼻息が荒い割には内容が薄いのは前述の通り。○○選記事でなかったとしても、記事のタイトルにエクスクラメーションマークがついている記事はなんとなく暑苦しくて嫌だ。レビュー記事のタイトルなんかにこれがついていたら、その記事はもう駄記事率がハネ上がる。アテナエクスクラメーション同様、記事のタイトルにエクスクラメーションマークを使用することは永遠に禁止してほしい。もちろんこの禁を破ったライターには積尸気冥界波を食らわせてやって黄泉比良坂に追放である。

6.結びのフレーズ

まとめ記事の多くは記事の結びに「(この記事の内容は)いかがでしたか」というフレーズが出てくる。いかがもイカンガーもないもんだ。文章の結びのフレーズ、いわゆるオチの部分は記事の読後感を大きく左右するので、非常に重要であり難しい部分にもかかわらず、いかがでしたかと記事を最後にぶん投げてくるあたり、きちんと考えて文章を物しているとはとうてい思えん。自信をもって選んだゲームについて書いたのであれば、いかがでしたでしょうか、なんて読者の反応をうかがうような文言をわざわざ記事に入れる必要はない。正直、下卑た追従にしか見えない。

さらにひどいものになると、いかがでしたかの次に、「あなたに合うゲームがあるといいですね!」などとぬかす記事もある。そもそも絶対盛り上がるとか初心者向けとか言って紹介しているにも関わらず、なぜ最後でいきなり投げっぱなしジャーマンをかましてくるのか。何々ですね、という馴れ馴れしさもひたすら不快だ。

いかがでしたでしょうか。これで○○選記事が撲滅されるといいですね!

*1:余談だが、おれは一昔前の創元推理文庫の巻末に掲載されていた、作家別の各著作の紹介文が好きだ。ほんの数行で書籍の面白さを語れるのは、敏腕の編集者が関与しているからだろう。