ボードゲーム「Carcassonne: New World(カルカソンヌ:新大陸)」

ボードゲームに関する評価のポリシーについてはこちらを参照のこと。

基本情報

ゲームの概要

カルカソンヌの独立拡張の1つで、テーマは新大陸への上陸、フロンティアの開拓である。普通のカルカソンヌと基本的なルールは同じなので、相違点だけ述べていく。

  • スタートタイル及びプレイエリアの制限
  • 猟師と交易所
  • 測量士
スタートタイル及びプレイエリアの制限

通常のカルカソンヌは裏が他のタイルとは違うものが1枚だけあり、それがスタートタイルとなってプレイエリアが広がっていく。カルカソンヌ:新大陸では得点ボードを兼ねたスタートボードが付属していて、すでにプリマス、ニューヨーク、ジェームズタウンという3つの町が(不完全ながら)存在する。ここが東海岸となり、プレイエリアは左側、つまり西へと広がっていくことになる。また上下についても際限なく広げることはできず、ボードの上下辺を超えて配置することはできない。

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ボード全景。
猟師と交易所

猟師は通常のカルカソンヌの農民と同じだが、農民がゲーム終了時に自分が支配している草原にある完成した町1つにつき3点なのに対し、新大陸の猟師は、自分が支配している草原と森(ゲーム的な区別はない)に生息している動物マーク1個につき1点となっている。後述する測量士のルールにより、得点機会が限られている本作では、測量士に邪魔されない猟師は、支配権さえあれば確実に期待できる得点ソースである。また、小さい子供とカルカソンヌをするときに農民ルールは難しくて省くことが多いが、猟師ルールは動物マークを数えるだけなのでわかりやすい。

交易所については拡張1「宿と大聖堂」における宿つきの道に似ていて、道が完成したときに、道沿いに建っている交易所1つにつき2点が追加される。違う点は、宿は道が完成しないままゲームが終わると、その道にかかる得点はすべて0点になってしまうが、交易所は通常通り未完成の道タイル数×1点と交易所数×2点がきちんと加算される点だ。道は主要な得点源かつ交易所によるブーストがあるので、通常のカルカソンヌではほとんど見ることのない道の相乗り(支配権の分け合い)も必要になる。

測量士

測量士はこの拡張の最大の特徴で、得点の追加要素でもあり、妨害要素も兼ねている。測量士は2名いて、ボードの上下辺に1コマずつ、初期配置はスタートボード上に置く。

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測量士

測量士いずれかのプレイヤーの得点が発生した直後に、いずれかの測量士コマを1マス左に動かす。このときに、必ずスタートボードに近い列にいるコマを動かさなくてはならない。同じ列に2コマある場合は、任意のコマを選んで動かす。このときに、2つの測量士コマのいるラインよりも右側にある、猟師以外のミープルは、すべて各々のプレイヤーの手に戻されてしまい、得点も発生しない。フロンティアの開拓に乗り遅れてしまったということだ。通常のカルカソンヌは建物なり道なりが完成しない限りミープルが戻ってこないのだが、新大陸では誰かが得点をするたびにミープルが戻されてしまう可能性があるために、手持ちのミープルは5個しかない(通常は7個)。測量士を使うことで、完成間近の町を支配しているミープルを戻させることができる。また、測量士より右手にタイルを配置し、ミープルを置くこともできるが、次に誰かが得点をした瞬間、そのミープルは取り除かれてしまうのは同じ。

できるだけ測量士から遠くの列にミープルを配置すればいいのだが、測量士には得点をブーストすることもできるところが悩ましい。施設を完成させたときに、そこを支配しているミープルと同じ列に測量士がいた場合、1コマにつき4点が加算されるのだ。つまり、測量士にもう少しで追い越される状態(同じ列に測量士が2コマある状態)で施設を完成させることで、道ならば8枚、町ならば4枚分と同じ価値の追加得点が生じる。これは実に大きい。また、1枚のタイルで複数の施設が完了する場合は、得点計算をするたびに測量士が動く。そして得点計算の順番は、タイルを置いたプレイヤーが任意に選べるところに面白さがある。例を示そう。

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黒のプレイヤーによる鬼引き。

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これにより赤の農家(通常版における修道院)、黒の町、青の道が完成する。

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黒のプレイヤーはまず青の道を解決する。道タイル4枚と交易所2つで4+4=8点。

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得点計算が発生したので、測量士を1マス左に。上の測量士と同じ列にいたので、ここでは下の測量士を動かした。(訂正:写真は移動済みのものでした)

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次に黒の町を解決。町タイル4枚とイギリス国旗(通常版の盾と同じ)、今動かしたばかりの測量士がいるので、8+2+4=14点。

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また得点計算が発生したので、より右側の列にいた上の測量士を動かす。

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2人の測量士よりも右側に取り残された赤のミープルは取り除かれる。

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次は完成した農場の得点を…はっ、農場にいた赤のミープルがいなくなっている!赤のプレイヤーは「あ、ありのまま今起こったことを話すぜ」と口にするに違いない。

この例では他のストーリーも考えられる。もし赤のプレイヤーよりも黒のプレイヤーが得点をリードしているならば、先に赤のプレイヤーの農場を完成させ(農場9点+測量士2コマ8点=17点)、次に青の道を完成させた(道4点+交易所4点=8点)後、最後に黒の町の得点を解決すれば、町8点+国旗2点+測量士2コマ8点=18点となる。他プレイヤーとの得点差がどうなっているのかによって、いくつか選択肢が生まれるわけだ。他にも自分で得点化をしたいが、今得点化をすると、相手にリーチがかかっている施設に測量士が移動してしまい、大量得点されてしまうリスクが発生する…といった、測量士を介した他者との絡みも発生するため、考えどころは多い。

ゲームに対する評価

カルカソンヌは何回もプレイすると、どうしても淡々としてしまうが、新大陸のようにテーマ性があると、途端に開拓者たちの息遣いのようなものが聞こえてくるような気がする。また、序盤は測量士から離れた列にタイルがおけない関係で、測量士あぼーんされる前に得点化すべく、2枚町(俗にリップ都市とか言われているアレ)や短い道が次々に作られていくが、中盤にさしかかると測量士から離れた列にもタイルが置けるようになって、展開がゆっくりしたものになる。それなりの大きさの町や農場が作られ、道も長くなり、猟師がちらほらと出現する様は、徐々に新大陸に人々が定着していく様子に見えてくる。終盤は少しでも得点化できるように、また細かい施設が作られていき、測量士の動きもスピードがあがっていくという、新大陸における西漸運動と同じような展開となる。デザイナーの意図したものかどうかは不明だが、カルカソンヌのルールを大きく変更することなくこの展開を演出したのであれば、ユルゲンすげーの一言である(カルカソンヌ以外パッとしないとか思ってすみません)。

逆に不満点としては、上記の裏返しで、測量士がいるために大きな町ができず、また農場はほぼ完成しない。また道の使い勝手がよすぎて、他の得点手段とバランスが悪いということができる。おそらくこのあたりがBGGで評価されていない原因と思われる。町のイギリス国旗をもう少し増やすか、国旗の追加得点を3点くらいにすれば、少し大きな町を作ろうか、ということになりそうな気がする*1

通常版のバランスと比べると、どうしても大味なものになってしまうのは確かだが、テーマによくあっていて、測量士による妨害も息苦しさを感じない。元々がカルカソンヌなので面白さも保証されている。少し毛色が代わったカルカソンヌがプレイしたくなったときにおすすめのゲームである。

boardgamegeek.com

*1:大きな町が作りづらいことはデザイナーもわかっていて、通常版に1枚だけ入っていた町オンリーのタイルは存在しない。