ボードゲームの雑感「ダムゲー(その1)」

先日の梅雨前線による豪雨災害をはじめとして、近年とみに豪雨による災害が頻発している。様々な要因が挙げられているが、今回の災害に関しては治水事業の失敗という人災の側面が大きいのではないかと考えている。某(亡)民主党とかいうアホの事業仕訳というパフォーマンスの犠牲になったと思うからだ。結果論であり過大評価と言われるかもしれないが、ダムがあれば今回の災害は防げないまでもずっと軽微な被害で済んだと思う。

とまあ、なぜそう思うのかをつらつらと書いても良いのだが、ダム好き(おれだ)以外にはくにちーの焼き直しゲーほどにも興味がないだろうから、ダムのボードゲーム、略してダムゲーについて話をしよう。

ダムゲーといえば、まさにダムがメインテーマである「Barrage」がすぐに思い浮かぶ。ダムを建設、運用して発電し、契約を達成していくゲームで、テーマのマニアックさ、しかしそのゲーム性の高さで、個人的にはベスト10に入るお気に入りである*1

ただ、Barrageは確かにダムゲーだが、我々日本人のダムに対するイメージとは少し違う印象を受けることもまた確かである。なぜなら、ダムは水力発電としての利用以上に治水の象徴として扱われることが多いからだ。ちなみにダム便覧2019でざっと集計すると、日本国内のダム2755基のうち、洪水調節機能を持つ治水ダムは861基、発電機能を持つ利水ダムは659基で、洪水調節と発電機能を兼ねるダムはそのうち189基である。国内のダムのメインは治水なのだ*2

さらっと書いてしまったが、治水ダムとは洪水調節機能を持つダム、利水ダムとは水を利用する用途(発電だけではなく農業用、工業用、上水道用ほか)のダムで、治水と利水の両方を兼ね備えているダムのことを多目的ダムという。だからBarrageは正確に表現するならば利水ダムゲーと言えるだろう。

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ダムの管理所などでもらえるダムカード。カードの右上のアルファベットがダムの用途。Fは洪水調整、Wは上水道、Pは発電。右下のアルファベットはダムの形式でAはアーチ式、Gは重力式。カードの裏はダムの基本スペックや技術面の豆知識等が掲載されている。

他に利水ダムゲーとしては「Dos Rios」がある。ふたつの河(Dos=2つ、Rios=河)に挟まれた土地で農場を経営し、水資源を争奪しつつ作物を作り、資金や資源を得ながらいち早く施設を建設するゲームだ。水資源は河で得られるのだが、ダムを建設することで河の流れを変えることができる。まあこの場合のダムはどちらかというと流路変更を行うための堤防であり、ダムと呼ぶのはいささか抵抗があるのだが、ルールブックでダムと書かれているのだから仕方ない。

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Dos Rios。BGG(https://boardgamegeek.com/image/44988/dos-rios)から拝借

一方で治水ダムゲーはあるのか、と問われれば、「Pandemic Rising tide」が吉野美佳、もといギリギリ当てはまるかもしれない。ただこのゲームで建設するのは、治水設備ではあってもダムではなく堤防なので、個人的にはダムゲーと呼びたくはない気持ちが97%くらいある。また、こちらは未プレイだが、「大禹治水(Da Yu:The Flood Conqueror)」も必要な資材を集めて洪水を防ぐための堤防を築くゲームのようで、これまたダムとは言い難いところがある。

つまり、現時点である程度の知名度をもった治水ダムゲーは存在しないといってよい。このことはちょっと残念に思う。なぜならダムによる治水はボードゲームの題材に向いていると思うからだ。

その理由は次回のエントリーで述べることにしよう。

*1:もっとも、kickstarterでのパブリッシャーの対応のまずさから、BGG上ではゲーム性ではなくパブリッシャーに対する低評価が続出していたが、現在ではスコア8.1(全体145位)と持ち直している(2020/7/22現在)。ちなみにゲーム性以外の評価と思われる1点評価を除くとスコアは8.3となり、まず確実に50位以内には入るだろう。

*2:実は日本のダムの用途として最も多いのはかんがい用で、その数は1500基を超える。ただそのほとんどはアースダムと呼ばれるもので、いわゆる我々が想像するコンクリートの塊ではなく、土砂による堰状のものである。いわゆる溜池ゴローというやつだ。