ボードゲームの雑感「マーダーミステリーがはやるミステリー」

ご他聞に漏れず、ボードゲームメカニクスやジャンルには流行り廃りがある。世界のボードゲームマーケットでもあるが、日本の同人ゲーム界隈では特に顕著である。少し前は人狼大喜利ゲーム(コミュニケーション系ゲーム)ばかりだった。人狼大喜利ゲームデザインの際にシビアなゲームバランスを考えずに済み、盛り上がりはメンバーのせいにすることができるので、似たようなゲームが乱立することになる。仲間内で盛り上がりのハードルが低い状態で(グループで活動しているユウチュウバアによるプレイ風景とか、無理やり盛り上げなくてはならない雰囲気も含まれる)あっても、シラフでソクラテスラや我流功夫極めロードをやるのは、相当な精神的苦痛を伴うのではないかと思う。また、この手の類のゲームは最低でも5人以上は集まらなければ成立が怪しい。そもそもこれらのゲームのターゲットとしている層は、別にボードゲームじゃなくても楽しめればよいという人々なので(人狼については参加者が二極化している問題が別にある*1)、だったらわざわざ道具を用意してやるまでもなく、飲み会の定番ゲームでもやればよろしい。個人的なおすすめは「愛してるよゲーム」「たこ八」「パーマン」である。知らない人のために、本記事の最後でやり方を説明するので、興味があれば参照されたい。

で、最近のトレンドは?

こういう状況の中、最近のトレンドだなあと感じるのは、表題にもあるようにマーダーミステリーである*2。全員が共通して認識する舞台設定(大抵は殺人事件)と、参加者それぞれに秘密の台本が割り当てられ、会話の中から犯人を見つけ、犯人役であれば追及を逃れるゲームだ。この内容から、記憶を自由に忘却できる手段が確立されない限り、参加者は同じゲームを繰り返しプレイすることができない。メーカーやボードゲーム紹介のユウチュウバアは、これをさも得意げに「一生に一度しかできないゲーム!」とか称しているとかいないとか。個人的には一生に一度しかできないことに特別な価値はないと思っており*3、むしろ繰り返しできないことが、むしろマイナスなのでは?と考えている。似たようなものに、巷で人気の謎解き脱出ゲームも同様に一度しかできない体験ではあるが(実際にEXITのような謎解きボードゲームもある)、与えられた課題に知力と発想力を注力して謎解きに挑むのは、ボードゲームの楽しさの源とおれが考えている「考えることによる疲労感」に合致する。また小道具も舞台装置の一部として謎解きに没入できるように配慮されている。

一方でマーダーミステリーは一度しかできない上に、それぞれの役割に制約(言っていいことや悪いこと、隠すべきこと)があり、演じるだけで結構なストレスがかかる。また演じ手の誤認識があれば、意図しないとはいえ致命的なミスリードになり、種明かしの際に一気に盛り下がる危険性を孕んでいる。一生に一度しかできないゲームの体験の結末がそんなんだったら目も当てられまい。

マーダーミステリーの問題点は他にもある。ストーリーの出来である。ミステリーと言っているからには演じ手以上にストーリーの良し悪しがゲーム体験を左右する要素だが、その性質ゆえにレビューができない。何かを購入する上で、レビューやその対象の内容を確認するのは当たり前の行為である。それを両方とも拒否するのがマーダーミステリーだ。ざっくりと「よくできている」「いまいち」という評価はできなくはない。商品紹介にあるようなあらすじも、中身の面白さに直結しない。となると何をヒントにプレイする作品を選べばいいのかわからない。グループSNEなんかは毎月のように新作を発表しているようだが、正直、粗製乱造のような印象を持っている。うがった見方と承知の上で、感想すらもネタバレという雰囲気のあるなかで、作品の批判がされにくいということを隠れ蓑に、はやりに乗っかって売り切ってしまえ、という疑いをもってしまう。

余談になるが、ソード・ワールドRPGを筆頭に中高生の頃に大変お世話になったグループSNEが、おれの中でだいぶ評価が落ちてしまったのを改めて考えると、ずいぶん寂しい気もする。

番外:飲み会定番ゲーム

・愛してるよゲーム

まず円形に並ぶ。男女交互になるように並ぶのがよい。
スタートプレイヤーは、右隣か左隣のプレイヤーに「愛してるよ」「はぁ?」のいずれかの声をかける。
声をかけられたプレイヤーも同じく右隣か左隣のプレイヤーに「愛してるよ」か「はぁ?」の声をかけることになるが、スタートプレイヤーが右隣に「愛してるよ」と言ったのなら、右隣のプレイヤーには必ず「愛してるよ」と言わなければならない。左隣のプレイヤーに言うときは必ず「はぁ?」である。スタートプレイヤーが右隣に「はぁ?」と言ったのならば、右隣には必ず「はぁ?」であり、左隣には「愛してるよ」と返す。
「愛してるよ」と「はぁ?」を間違った人が負け。

バリエーションに「I love you」「Pardon?」がある。難易度を上げるならば、「愛してるよ」「はぁ?」を常に言い換えるルール(愛してるよ…好きだぁー!、嫁にこないか、君しかいないetc. はぁ?…おとといきやがれ、アウトオブ眼中、ハウス!etc.)としても良い。感情を込めて言ってあげよう。

・たこ八

段階を追ってプレイしたほうがわかりやすい。これも円形に並ぶ。全員軽く両手の拳を握り、手の甲を上にして腹の前あたりに構えておく。

基本ルール:スタートプレイヤーが「1」と言いながら、両方の親指で右か左を指す。左を指した場合は左手の親指が左を指すようにくるりと手が裏返ることになる(右の拳は親指を出すだけ)。右を指した場合はその逆。指を指された方のプレイヤーは「2」と言いながら、同じように両方の親指で右か左を指す。これを繰り返す。「10」までいったらまた「1」に戻る。間違えたり詰まってしまったプレイヤーが負け。

レベル1:「8」のときだけ、「8」という代わりに「たこはちと言う。このとき両手はシェーの形、すなわち握りこぶしから指を伸ばした状態にして、右(左)手を頭の上に、左(右)手を腹のところに持っていく。前からみればSまたはSの鏡文字のような恰好となる。このとき、頭上の手が指し示す方のプレイヤーが次の数である「9」を言うことになる。間違った仕草をしても負け。

レベル2:レベル1の内容に加えて、「10」のときに「10」ではなく「いかじゅう」と言う。このとき、合掌して頭上に振りかぶり、両手でチョップをする。チョップの指先が向けられたプレイヤーが次の数である「1」を言うことになる。「いかじゅう」で指す先は、真横でも正面でもどのプレイヤーでも構わない。

レベル3:レベル1、2に加えて「5」のときに「5」ではなく「うなぎのご」(なんでだ)と言う。このとき、両手を合掌しながら腕全体でうなぎのようにうねうね動かして最後の「ご」とともに他のプレイヤーを突きさすように示す。「いかじゅう」と同じように、指されたプレイヤーが次の「6」を言うことになる(結果として「うなぎのごッ!」という発音になる)。この段階で、「1、2、3、4、うなぎのごッ!、6、7、たこはち、9、いかじゅう」という呼称が出そろう。

レベル4:レベル1のみを適用するが、日本語は一切禁止となる。それ以外のやり方は同じ。すなわち「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、オクトパスエイト、ナイン、テン」である。日本語は一切禁止なので、「あ、しまった」とか「誰々さんから」というのもダメ。それぞれ「Oh,no!」とか「Let's start from Mr.○○」とか言わなければならない。なお発音の良し悪しは問わない。

レベル5:レベル1~4の内容を統合する。すなわち日本語禁止で、「ワン、ツー、スリー、フォー、イールファイブ、シックス、セブン、オクトパスエイト、ナイン、スクイッドテン、ワン、ツー、スリー…(以下繰り返し)」

パーマン

せんだみつおゲームと同じ。せんだみつおゲームは「せんだ」「みつお」「ナハナハ」だったが、パーマンパーマン1号」「パーマン2号」「パーマン3号」「ブービー」「ウキッ」である。パーマン2号とブービーが別々なのは謎だが、とにかくそういうことになっている。一応細かいやり方を示しておく。

スタートプレイヤーがパーマン1号」と言いながら誰かを指さす。指さされたプレイヤーはパーマン2号」と言いながら、また別の誰かを指さす。次のプレイヤーはパーマン3号」と言いながらまた誰かを指さす。次のプレイヤーはブービー!」と言いながら誰かを指す。その際に、「ブービー」と言われて指されたプレイヤーの“両隣”(指さされたプレイヤーではない)が「ウキッ」と言いながら両手を猿のように頭の上に持っていく。その後は「ブービー」と指さされたプレイヤーから再び「パーマン1号」と言いながら別のプレイヤーを指さす。「ブービー」に反応できなかったプレイヤー、「ウキッ」の対象ではないのに「ウキッ」をやってしまったプレイヤーが負け。なお人数が多い場合に誰を指さしたのかわからないことが発生するので、指すときはきちんと相手の目を見よう。

*1:人狼?何それ?面白そう!」という人々と、負けたら死ぬという覚悟で臨み、少しでもセオリーから外れた行動をする人がいれば不愉快を隠さないガチ勢という両極端なプレイヤー層になっている。

*2:ここで言うマーダーミステリーとは、5、6人のプレイヤーを想定した、シナリオ売り切りのものを指す。会場が用意されているような大規模なものは含まない。

*3:一度しかプレイできないと言えばレガシーゲーだが、ネタバレはしているものの展開が異なれば別のゲーム体験を生むので、繰り返しプレイできないわけではない。実際にイーオンズエンド・レガシーは初期状態に戻せるようなリセットパックも売っている。