前回は「マナビィといっしょにおつかいすごろく」(以下、マナビィ(笑)と略す)という教材をさんざんこき下ろしたわけだが、今回は“遠足で食べるお弁当の材料とおかしを1000円以内の予算で買う”というテーマだけ借りて、もっとマシな教材(ボードゲーム)を考察してみようと思う。
(ちなみに前々回の内容はこちら)
舞台となるボード
手始めとして、マナビィ(笑)の一番のクソ要素であるスゴロク形式を廃することにする。かわりに町内会の地図を方眼紙で作成する。あまり広すぎてもめんどうなので、12×12くらいの大きさが適当だろう。地図にはスタート&ゴールとなる自宅、コンビニ、スーパー、八百屋、肉屋、魚屋、駄菓子屋、交番、イベントマスを配置する。店は適度に地図上に分散させるが、コンビニだけは複数軒用意し、そのうち1軒は自宅の側に配置する。スーパーはできるだけ遠くに配置する。なお自宅はプレイヤー人数分だけ用意したほうがよい。
コンポーネント
プレイヤー分のコマを用意する。
品物カードをカテゴリーごとに作成する。ジャンルは「野菜」「果物」「肉」「魚」「菓子」とし、それぞれ山札にする。各カードの枚数は、人数分×2程度とする。まったく同じカードがあってもよい。品物カードには品物名と店における価格が記載する。その際に、店ごとに価格の勾配をつける(理由は後述)。
例:ダイコン 100円(スーパー) 80円(八百屋)
イベントカードを作成する。イベントは引いたらすぐに発生するイベントと、アイテムとして持っておき、任意のタイミングで使用できるイベントの2種類がある。イベントの例は次の通り。
- 忘れ物(即時イベント) → 自分のコマを自宅に戻す
- 財布を落とした!(即時イベント) → 交番に行くまで買い物ができない
- 財布を拾った!(即時イベント) → このカードを自分の目の前に置く。このカードを持っている限り、ゴールすることができない。交番に寄ることでこのカードを捨てることができる
- 友達に会った(即時イベント) → 話し込んでしまって1回休み
- 知り合いのおばさんに会った(即時イベント) → 場に出ている菓子カードを1つもらえる
- 特売のチラシ(アイテム) → スーパーで買い物するときに、品物1個を半額で買える
- スタンプカード(アイテム) → スーパーで買い物するときに、100円までのものをタダでもらえる
- 自転車(アイテム) → 移動するときに移動力が3倍になるが、卵を持っているときに使うと卵を失う
- エコバッグ(アイテム) → 買い物をするときに品物をもう1個買える
- ガムの当たりクジ(アイテム) → コンビニ、駄菓子屋で買い物するときに、ガムが店あればタダでもらえる
買い物をしたら管理シートに書き込む等はもともとのマナビィ(笑)に準じて行う。
これで準備は完了だ。
ゲームの進め方
全員自分の自宅マスに自分のコマを置く。
手番は次の手順で行う。
- コマの移動。止まったマスが店または特殊マス以外であれば終了
- 止まったマスが店であれば、カードをめくる
- その店においてある品物を1つ買う(買わなくてもよい)
1:コマの移動
マス目にそって自分のコマを移動させる。3マスまで移動できるが、斜め移動はできない。1つのマスに複数のコマがいてもよい。
イベントマスにとまった場合はイベントカードをめくる。即時イベントであればただちに効果を適用して終了。
アイテムであれば手元にカードを保持して終了。
自宅であればゲームを終えるかどうかを判断する。
2:店
店に止まったら、マスに書かれている指示の通りにカードをめくる。指示の例は次の通り。
- コンビニ:果物を1枚、菓子を1枚めくる
- スーパー:すべての種類のカードを1枚めくる
- 八百屋:野菜、果物を合計3枚めくる
- 魚屋:魚を3枚めくる
- 肉屋:肉を3枚めくる
- 駄菓子屋:菓子を3枚めくる
この処理は実際の店舗で品物を探す行為に相当する。
めくられたカードはそのままその店に置かれるが、店舗の規模によって置けるカード数が決まっており、規模を超えた分のカードは、任意のカードを捨て札とする。なお今めくられたカードは捨て札にすることはできない。この処理は買い物の前に行う。規模の例は次の通り。
- コンビニ:3枚
- スーパー:12枚
- 八百屋、魚屋、肉屋:6枚
- 駄菓子屋:3枚
この処理は、店舗の商品配置スペースと、売り切れを表現している。
なお、めくるべき山札が尽きたときは、捨て札をシャッフルして再度山札として使う。
3:買い物
現在店舗に並んでいるカードのうち、お金を払ってカードを獲得する。原則は1度に買えるのは1枚だけ。
1度に1個だけ買う行為は現実離れしているが、スーパー決め打ちですぐにゲームが終わるのをふせぐ意味がある。
なお、前の手番で店にいて、次の手番でも買い物を続けようとする場合は、2を省略することができる。省略しなかった場合は、通常の処理に従い、オーバーした分のカードは選んで捨て札とする。
アイテムの使用
アイテムは自分の手番で使用する。基本は使い捨てで、1度使ったら捨て札にする(例外あり)。1度に使える枚数に制限はない。
ゲームの離脱
買い物の目的を達成したと考えたなら、自宅に戻ってゲームから抜ける。
選択ルール
競争性をもたせたいのであれば、次のいくつかのルールを適用する。
【売切ルール】山札が尽きたときの再シャッフルは行わない。
【得点ルール】次のような得点ルールを設定し、最終的に一番高い点をとった人が勝ち。得点は4人プレイ時。
- 弁当のおかず目標を5個まで各自設定し、一つ達成できるごとに+10点(例:シャケ、卵焼き、ほうれんそう、のり、ひじき)
- 一番多くのおかずをそろえた人に+30点、二番目に多くおかずをそろえた人に+10点、ビリは-5点
- 一番多くお金を残した人に+10点
- 一番早く上がった人に+20点、二番目に早く上がった人に+10点、ビリは-5点
- 使わなかったアイテムカード1枚につき+5点
教材として考えるべきこととは
今回考案したものは、ボードゲームとしてはたいして面白いとは言えないが、教材の要素として前回挙げた、
1:内容的な妥当性
2:教育内容の伝達性
3:興味関心を引く新奇性
を一応補うようにはしている。
まずはマナビィ(笑)で問題だった2に関しては、無意味なスゴロクを廃したことで、謎のサイコロ処理を無くし、実際の買い物場面に近づけている。店でカードをめくる点だけが現実離れした処理となるが、これは3の興味関心を引く新奇性を重視したためだ。自分の欲しいものがそこにあるかどうか、カードをめくるワクワク感は、3の要素として大きい。
また、このルールはマナビィ(笑)よりもプレイヤー間のインタラクションを高める要素も持っている。つまり、先に手番を行うプレイヤーによって、自分のほしいものがその店に出現したら、わざわざ運試しをする必要はないわけだし、めくることでカードを流せることによって、他のプレイヤーの邪魔をすることもできるからだ。
得点ルールを採用すれば、駆け引きも生まれやすい。
また、イベントカードも地味に2、3に関わっている。プラスにもマイナスにもなるイベントはギャンブル要素として3を高めるし、アイテムカードは現実の消費活動においても納得がいくもの(特売チラシや当たりクジなど)を用意して2に厚みをもたせることもできよう。
その他、品物カード同士の値段の対比も重要な考察事項だ。例えば肉は大きく分けて牛、豚、鳥の3種類だが、同じひき肉でも値段が違うのはどうしてか、同じ牛でもロースやももといった部位でも値段が違うのはどうしてか、といったことを考えさせてもよい。
対象年齢を下げるのであれば、店を減らしたり、店にあらかじめ品物を並べて置くなど、要素を絞っていけばよいのだ。もっとも、基本ルールであれば対象年齢である小学校高学年であれば問題ないと思う。
試しに作ってみたコンポーネントの例は図を参照いただきたい。バランスをきちんと調整しているわけでもないので、あくまでもイメージなので、あしからず。
最後に言いたいことが一つ。いらすとやは万能である。