kickstarterの注目案件「Philosophia」

久しぶりにkickstarterでおおっと思ったのがこれ。

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古代ギリシャの哲学者となって、学園を建てたり支持者を集めたり、他のプレイヤーに論戦を挑んだりして勝利点を稼ぐゲームのようだが、何がビビビ(死語)ときたかというと、この哲学者の胸像だ。フィギュアゲーが対して好きでないおれでも、これはそそられる。その昔、海洋堂が監修していた食玩インド神話編(わかりやすくいうと金剛力士像、四天王、五大明王といった仏像シリーズだ)をコンプリートするために、吉祥寺のLoftで買占めを行ったことを思い出させるくらい、イカす(死語)造形である。

また、プレイヤーとなれる哲学者の中にソクラテスがいるのも素晴らしい。世界史上、1、2を争うほどカッコいい哲学者である。ソクラテスのカッコよさは、弟子のプラトンが描く「ソクラテスの弁明」に詳しいので、ぜひお読みいただきたい。薄くてすぐ読めるだけでなく、解説でも指摘しているとおり、プラトンの創作が入っているとはいえ(プラトンソクラテスの裁判時にその場にいなかった)、起訴事実についてその場でいかにも受け答えをし、産婆術を持って告発者の矛盾を突く様は痛快だ。そして判決と量刑が下されたときに、最後まで無罪に票を投じた人々に対して、今まで「アテナイ人諸君」と呼びかけていたソクラテスが、はじめて「裁判員諸君」と呼びかけるところなどは感動を覚える。つまり、茶番に等しい裁判に参加する人々はマンモス哀れな奴(車田語)ということで裁判員たる資格を認めず、正当に自分を判断した人間のみを裁判官たるにふさわしいと称したことが、この些細な呼び方の違いによって表現されているのだ。

https://www.amazon.co.jp/dp/4003360117(※久保勉訳の岩波文庫版が一番お勧め)

余談だが、ソクラテスの向こうをはる哲学者はディオゲネス。樽の中に棲んでいて、その評判を聞いた、当時は将軍だったアレクサンドロス大王が会いにいき、「望みのものを申せ」と言うと、「そこをどいて欲しい。陰になるから」と答えたという。これにはアレクサンドロスも苦笑をしたに違いない。

ええと、ゲームの話だった。kickしようか迷うところだが、カードやプレイヤーボードのフレーバーテキストをきちんと和訳する自信がないので、ホビージャパンあたりが日本語化することを期待して今回は見送る可能性が高い。kickじゃないと胸像がつかない恐れはあるが…いや、やっぱりkickするか…

ちなみにプロジェクトの終了は2019年10月10日である。

※2019年9月27日追記
ルールの和訳(完訳ではない)をしたので別エントリーにて。ちなみにおれはkickしません。