ボードゲーム雑感「我が人生におけるボードゲーム史(再就職~現在)」

前回から少し間が空いてしまったが、今回は最終回。最初の仕事を辞めてから現在までを振り返る。

会社を辞めてから、身分証明書代わりに原付の免許をとり、2か月ほどブラブラしていたが、その後、派遣社員契約社員といくつかの会社で働いた後、再びベンチャーで正社員登用された頃には、ボードゲームの収集も再開していた。ただ、付き合いの酒があったり、ロードバイクを買ったりといった財政的な問題もあり、以前よりはボードゲームの増えるペースは緩やかになっていた。

この時期はプライベートではけっこう暗く過ごしていたため、ボードゲームを買ってはいてもプレイしない日々が続いていた。が、仕事の上ではボードゲームの知識やメカニクスを利用した研修プログラムを作っていたので、仕事の資料のような位置づけになっていた。
この状況に、微妙に変化が起きたのは、職場の有志でのスキーでのことだった。幹事として行きつけのスキー宿を手配する一方で、夜の暇つぶし用にアクワイアを持って行ったのだ。これがなかなか評判よく、ボードゲームはある程度間口が広いのではないかと思うようになる。

さらなる情報や掘り出し物を求めてヤフオクを眺めるようになるのもこの時期だ。当時はボードゲームのカテゴリ全体で1000を少し超えるくらいの出品件数しかなかったので、すべてチェックするのも容易だった。この時期に手に入れたものが6人用バルバロッサ、ブラックロック城、チャオチャオ、クロンダイク等、当時すでに絶版になっていたゲームである。2020年現在のヤフオクボードゲームのすそ野がわずかに広がった関係で、出品数が4500を超えるに至っているが、同時に転売屋(クズと読む)もはびこるようになった。結果としてすでに絶版となった名作ゲームではなく、近年の話題作で出品は溢れ、そうした作品の中でも完売状態となり再販待ちとなったゲームが異様に高騰する場と化してしまった。もちろん当時とて絶版ゲームに対する価格の高騰(旧版アラカルト、冷たい料理の熱い戦い、バベル、ビッグシティ等)はあれど、価格のつり上げを目的とした出品は、そう多くなかったと思う(ないとは言わないが)。

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ヤフオクで手に入れた希少ゲーム。旧版アラカルト、冷たい料理の熱い戦い、クロンダイク

あーッ!オークションで1回だけ大変不愉快なことがあったのを思い出した。
とある出品者がくにちーの「メンバーズオンリー」を出品していた。最低落札価格も即決価格も示されていない。開始価格は4,000円程度。入札者なし。残り時間は2日程度。まあ直前に何人かが入札し、最終的には8,000円くらいかな(当時の相場ではそのくらい)、と思いながら、開始価格で入札した。ところが、オークション終了の1時間くらい前までまったく見向きもされなかったことから、これは落札できるんじゃあないかと思っていたところ、ほんとにオークション終了の直前に出品者都合で取り消されたのだ。自分が思い描いていた落札価格に達する見込みがなくなったから、慌てて取り消したのだと思う。無駄とは知りつつも、運営に通報したが、その後、当該出品者のアカウントは見ていない。IDを変えて同じことをやっているのだと想像する。

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嫌な思い出がよみがえるメンバーズオンリー。画像のものはヤフオクではなく、後日ナイトフライトシュピーレあたりで手に入れたもの。

話が脱線した。

前回の内容でも触れたが、だいたいこの頃に大学サークルの先輩と飲む機会があった。その先輩はおれが現役のときにはすでにOBだったのだが、なんとなく接点は多く、おれが卒業した後も年に1回くらいは飲む機会があったのだ。そこでたまたまボードゲームの話が出て、互いにボードゲームが好きなことが判明した。初対面から10年くらい経ってから初めて知った事実であった。

それからは毎月1回程度の割合でその先輩の家でクローズ会が開かれている。ゲームはその先輩とおれの持ち寄りだ。当初のメンバーは5人だったが、そのうちおれの奥さん(当時はまだ違ったが)が加わったため、6人までがプレイ可能なゲームを探すのに苦労している。特に最近のゲームはプレイ人数が4人までのものが多いので、新作が出たときは、まず6人まで対応しているかを見ることが習慣になった。その意味では、Paolo Mori(アウグストゥスエスノスのデザイナー)にはとても世話になっている。一方で、最近多いコミュニケーション系のゲームが好きではないので、いくら対応人数が多いと言ってもキメラティック偉人バトルやカタカナ禁止、テストプレイなしゲーム系は買っていない。もちろんコミュニケーション系のすべてがダメなわけではなく、ゲームとしてきちんと成立しているもの(コードネーム等)、初心者に対する敷居が低いもの(ディクシット等)、スピーディーでバカバカしさが突き抜けていているもの(ガッチャ!等)は好んでプレイする。

そんなこんなで徐々にボードゲームがメディアでも採り上げられるようになったここ数年は、親しい友人宅に招かれた折や自宅に招いた折、また職場でも軽いボードゲームを持っていき、少しずつ輪を広げている。メンバーに合わせて慎重にゲームを選んでいることもあり、概ね好意的に受け取られているが、ボードゲームにはまり、自主的にゲームを買うようになった人はまだまだ少ない。少なくとも中量級のゲームをプレイし、頭を使いつつ競う段階までいけるかどうかが鍵のようだ。

仕事が比較的うまく行っていることもあって、ボードゲームは順調に増え続けていたが、ここ数年は増加に歯止めがかかっている。この記事でも書いたが、どうにも食指の動くゲームが少なくなっているのだ。代わりにkickstarterモノに注目し始めたわけだが、それも最近は停滞気味である。フィギュアばかりが強調され、肝心のゲーム内容が似たり寄ったりのものが目に付くので、フィギュアに執着のないおれとしては特に出資する理由がないのだ。それにフィギュアものは要求されるプレッジ(支援額)がバカみたいに高くなるし、日本はまだまだボードゲームの市場として認められていないためか、「アジアのその他地域」やら「その他の地域」とみなされ、かつフィギュアの重さも相まって送料がそれなりに高額である。ゲームをやるなら木製コマで十分であろう。

とまあ、問題点もあるにはあるが、たまにどストライクな出物もあったりするので、現在の新作の軸足はkickstarterにおかれていると言っていい。幸いなことに、リワード(出資の対価としての現物)が届かなかったことはないので、しばらくこの状況は変わらないだろう。ちなみにこの記事で言及した鳥居のゲームが、今度日本語版が発売されるそうだ。これで評判が良いとなったら、おれの目はとんだ節穴野郎ということになるだろう。

ここまで自分のボードゲーム史を振り返ってみたが、やはり小学校から中学時代に決定的な出会いがあったことがよくわかる。この出会いはほんの偶然ではあったが、おかげでその後の人生が確実に豊かになったという実感はある。改めてボードゲームというコンテンツの魅力を再認識した次第である。