ボードゲーム「街コロ」

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基本情報

  • 街コロ
  • 菅沼正夫
  • 2-4人
  • 30分
  • 2012年
  • 言語依存あり(カードにはすべてテキストによる説明がある)

ゲームの概要

街コロはサイコロの目によって収入を得ながら建物を建てていき、最終的に4つのランドマーク(駅、ショッピングモール、遊園地、電波塔)をいち早く完成させたプレイヤーが勝利するシンプルなゲーム。作者は菅沼正夫で「ひつじがいっぴき」や「ダイヤモンスター」など、軽めのゲームを制作している。

このゲームはカタンのように、手番プレイヤーがサイコロを振り、その出目に応じた建物を持っているプレイヤーに恩恵があるシステムが基本となっている。
カードは以下の5種類に大別される。

  • 青のカード:誰の手番でもサイコロの目に対応していれば収入になる
  • 緑のカード:自分の手番に振ったサイコロの目に対応していれば収入になる
  • 赤のカード:他人の手番で振ったサイコロの目に対応していれば手番プレイヤーから収入を得る
  • 紫のカード:自分の手番に振ったサイコロの目に対応して他プレイヤーから収入を得たり建物を交換したりする
  • 黄のカード:勝利条件のランドマーク。建物によっていろいろな効果がある

基本は青や緑のカードで収入を増やして、ランドマークを建てていくことになるが、緑のカードは青のカードによる相乗効果がある。例えば家具工場(緑)は森林(青)や鉱山(青)といった生産設備を持っていれば、その分だけ収入が増える。また同種の建物を複数建てても同様に収入が増える。つまり、2枚同じ建物があれば、単純に効果は倍になるということだ。徐々に街が発展し、収入を得られる出目が増え、収入額も増えていくので、典型的な拡大再生産系のゲームと言えるだろう。

基本セットのカード

基本セットのカード。一番下の黄色の4枚を建てれば勝利。

カードコンボの例

この例で言うと、家具工場は歯車のついたカード1枚につき3コインを生むので、3コイン×歯車カード4枚×2家具工場=24コイン

ただ、カタンは土や材木など、5種類の資源があったが、街コロの資源はコインのみ。簡略化されてとっつきやすいのは確かだが、逆に言えば底が浅く、毎回同じような展開になる。加えて、基本的にはソロプレイなので、先行したプレイヤーがいると誰も阻止できなくなるので、一気に作業と化すおそれがある。森林(青カード。5の目で+1コイン)、鉱山(青カード。9の目で+5コイン)を2枚ずつ、そして家具工場(緑カード。8の目で森林、鉱山の数×3コイン)を最初に揃えられたら、ほぼ勝ちは確定してしまう。拡張セットを導入したところで大差はないだろう。紫のカードで建物を入れ替える体制を整えたところで、手番のときにその目を振らなければどうしようもない。

web上では街コロを初心者に進める記事を多く見かけるが、おれは絶対に反対である。初心者にとってはサイコロを振って町を充実させることが目新しく映るのだろうが、ほぼサイコロまかせの運ゲーと言って差し支えない内容のため、サイコロ運に見放されるとどうしようもないのだ。ましてや接待プレイも難しい(あからさまになら可能だが)。これは大変なリスクだと思う。勝つのはもちろんだが、負けても楽しめるゲームがいいゲームであり、初心者にはそうしたゲームをチョイスすべきだ。負けても楽しいことの条件は、自分の裁量である程度結果をコントロールでき、最後まで勝利の機会が全員に与えられること、とおれは考える。街コロにはこのどちらも欠けている。町を作りたければ「Big City」をやりなさい(入手難だが)。
運の要素が強いとよく言われる似たようなゲームに、「テーベの東」がある。考古学をテーマにし、エジプトやらメソポタミアやらで発掘をし、勝利点を稼ぐゲームだ。発掘時は袋の中からチップを引き、そのチップが遺物であれば得点になるし、土塊であれば無得点なので、単純に見れば単純な引きだけのゲームに見える。しかし、このゲームの素晴らしいところは、その引き運をある程度コントロールすることができるという点だ。それに、発掘しなければ勝てないゲームではあるが、勝利点は学会発表をひたすら行うことでも得られるし、特定の文明に関する知識を他プレイヤーよりも高めれば、それも勝利点となる。何より遺跡発掘というシチュエーションが、引き運であることに意味を与えているので、初心者でも納得感を得やすいということもある。要素が少し多いものの、こちらの方がより初心者に勧めたいゲームと言える。

また、同じようなメカニクスのゲームで、2018年に発表された「スペースベース」は、SFという好き嫌いのありそうなテーマ性を除けば、あらゆる面で街コロを凌駕しているので、ダイスゲーを買うならば、断然「スペースベース」を推したい。
「スペースベース」が優れているのは、サイコロの目の選択幅を大きくしている点だ。街コロはサイコロを1個振るか2個振るかを選択しなければならず、2個振った場合は出目の合計値しか使うことはできない。一方、スペースベースは常にサイコロを2個振るが、それぞれのサイコロの目を適用してもいいし、合計値を適用してもよい。例えば1、5の目が出たとすると、1、5の目を適用するか、6の目として適用するかを選択できるのだ。これによって、何もできないという状況が少ない。次に、コインのリソース管理が重要であることは同じだが、毎ターンの基本収入という概念と、チャージキューブという別のリソースがあり、そして何より勝利点という概念があることが圧倒的にゲーム性を高めている。独走をしている他プレイヤーの邪魔をしにくく、差が開くと逆転が難しい欠点が克服できていないが、それでも一発逆転が可能な効果のカードや勝利点を削るカードもある。

街コロはルールが簡単なので、小学生でも苦も無くプレイでき、時間が短いことが最大の利点ではあるが、対象となるプレイヤー属性が狭すぎるというのが、おれの結論である。

全然関係のない話になるが、本ゲームの“街”コロというタイトルには違和感がある。“街”とは本来「街路」を指す漢字であって、いわゆるCityのことではない。正しくは“町”コロと表記すべきだろう。ビジュアル面としては“街”の方が優れているのは否定しないが。

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